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※『フューチャーソース・コンサルティング (Futuresource Consulting Ltd)

vol.1992020年4月23日

メディアボックス市場には2020年以降何が待ち受けているか

Futuresource Consultingによる最新「Worldwide Media Box」レポートでは、消費者の需要が従来のペイテレビからより適応性のあるSVoDサービスに徐々に移行するなか、メディアストリーマーとセットトップボックス(STB)市場が将来どう展開していくか、その展望について探っている。

「2019年のメディアボックス出荷量の増加がわずか1.1%にとどまり、それにセットトップボックス市場が横ばいだったことが重って、ペイテレビ業者はプレッシャーをますます感じています。革新的でより共創的なアプローチを考え出さなければ、顧客基盤を維持できないと感じているのです」とFuturesource ConsultingのシニアマーケットアナリストであるMatthew Rubin氏は言う。「従来の放送とIPを組み合わせたハイブリッドモデルを利用している人が多いのですが、Androidの利用というもっと思い切ったアプローチを採り入れる人も増えてきました」。メディアボックス全体の状況において最大級の課題となるのが、高速で高品質のネット動画配信を実現するためには信頼性の高いブロードバンド・インフラストラクチャが絶対に必要だということだ。このレポートでは、成熟した経済と発展途上地域の両方における異なった戦略的アプローチの必要性が強調されている。

リーチ拡大で争うストリーマー

世界におけるメディアストリーマーの最大市場は北米と西ヨーロッパ市場で、2019年のストリーマー市場の69%、メディアボックス市場全体の17%を占めた。SVoDが引き続きメディアストリーマー市場成長の最大の原動力で、スペイン語を始めとするローカル言語コンテンツの増加により、南米のような発展途上地域で関心が高まっている。

ペイテレビの混乱続く

ペイテレビの将来の方向性に明らかな混乱を引き起こしているのが、動画配信市場である。これを要因に、2019年にはペイテレビにおける消費支出が世界で2.5%減少した。競争の激しいコンテンツ市場で「コードカット」がますます顕著になるにつれ、ペイテレビ業者は配信動画コンテンツを自社サービスに統合することで自社の製品・サービスを進化させ、IP経由でコンテンツを配信するハイブリッドSTBに移行するよう消費者を促している。この傾向に拍車をかけるのが、最新式映像符号化方式の開発による接続性や画面解像度の大幅改善への期待だ。

「ハイブリッドSTBのコンセプトが西洋の先進諸国市場に依存する状態がまだ続いていますので、このIPへのアップグレードサイクルが世界レベルで発生するスピードについてもまだはっきり分かりません」とFuturesource ConsultingでConsumer Media&Tech部門のアソシエイトディレクターを務めるCarl Hibbert氏は言う。「その間、低価格のSTB製品は開発途上国を狙って売り出されることになるでしょう。多くの低所得世帯がペイテレビの新規加入に関心を示しているからです。比較的ベーシックで限られたな機能しか付いていないSTBだったとしてもです」

Android TV が新たな機会を生む要因に

コンテンツ消費市場の進化の様子を示す最新の例として挙げられるのが、Android TVの「Operator Tier」である。このデバイスにはファストトラックでホワイトラベルを提供するオプションが付いており、これによりペイテレビ業者が独自のOTTサービスを作ったり、それ以外の業者が「Pay-TV lite」の製品・サービスを作ったりする可能性が生まれる。Futuresourceでは2019年のSTB出荷台数を市場シェアの5%未満と予測しているが、一方でグーグルの発表によると、2019年にグーグルと提携した事業者は60を超える市場で140社以上に上るという。2016年の8社から比べると数の上では大幅に増加したことになるが、規模においては大半が小規模のものと考えられる。

互換性に関しては、事業者は一連の既存アプリから選択するだけでよい。これらのアプリは既にシームレスに機能しており、ユーザーエクスペリエンスの上にブランド化された消費者という外観が重ねられた、一種のオーダーメイドシステムのような錯覚を作り出している。

将来のオペレーティングシステム開発についてはあまり管理がなされていないが、メリットとして最も重要なのは、初期設定の開発時間(数年かかってしまう可能性から数か月にまで短縮される)にかかる費用や継続的なメンテナンスにかかる費用の面で、大幅なコスト削減が望めることだ。基本的には、オーダーメイドシステムを開発するよりもAndroid Operator Tierを使用する方がはるかに安くつく。

家庭用エンタメ分野の主な課題

事業者を全面的に管理し続けることがますます困難になっている。SVoDサービスといったサードパーティプラットフォームとの連携により、より優れたユーザーエクスペリエンスの提供が続く一方で、結果的にはそれによって消費者が他のプロバイダーに移行する可能性も大きくなるからである。これに加え予測期間中の課題リストに挙げられるのが、スマートTVオペレーティングシステムの改善の必要性である。デバイスにとらわれないアプリの形式を取るコンテンツプラットフォームが増加の傾向にあるからだ。

「グーグル、アマゾン、Roku(ロク)といったメディアストリーマーベンダーは、メディアデバイスの全種類において自社フットプリントを改善することで最新の注意を払うようにしています」とRubin氏は説明する。「ですがSTBエコシステムの管理を維持することで得られる利権を考えると、ペイテレビ業者大手が方向を変えるようになるには時間がかかると思われます」

メディアボックス市場レポート

Futuresource Consultingがまとめたこの最新レポートでは、メディアストリーマー市場の見通しを、ペイテレビおよび無料放送用テレビセットトップボックス市場とともに調査しています。両種のデバイスについて推進要因と阻害要因を詳しく調べ、2024年までの予測を提供しています。追加情報として新型コロナウイルスが家庭エンタメ市場に与える影響についても取り上げ、業界にとって将来どのような事態となるか、さまざまなシナリオを提供しています。

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