CEATEC JAPANは2011年より家電・端末・デジタルイメージ・ メディア・プロIT等の各分野において優れたデータ分析能力を誇る英国の調査・コンサルティング会社であるフューチャーソース・コンサルティング社とパートナーシップを締結しました。
消費者家電からプロ用機器分野まで、最新の技術動向や市場トレンド予測の最新レポートを、70人以上の常勤リサーチャーを抱えるナレッジパートナー フューチャーソース・コンサルティングが定期的にお届けします。

Vol.082011年10月31日

CEATEC JAPAN 2011 Report

Futuresource Consulting は、長年に渡りCEATEC JAPANに来場しているが、2011年はナレッジパートナーとして初めて公式に参与した記念すべき年となった。

2011年の来場者総数は172,137名と、昨年より若干減ってはいるものの、CEATEC JAPANは、消費者向け技術・製品、コミュニケーション、ロボット工学、主要産業プロジェクトやコンセプトに重きを置いたイベントとして、キーテクノロジーや新製品の発表では世界に名立たるエレクトロニクス トレードショーと言える。

昨年は3Dがセンターステージを飾ったが、CEATEC JAPAN 2011では、メガピクセルや3D、ネットワーク接続機能の実体験に加え、今年初旬に日本が見舞われた自然災害(ひいては原子力災害)や世界的に厳しい経済情勢が反映されており、環境やエネルギーコスト削減により強い関心が向けられた。エネルギー節約、低炭素社会構築、また災害時の備えを目的とした優れたアイデアや施策が目を引き、これらの展示では共通して太陽エネルギーの活用が提案されていた。

環境問題は、エレクトロニクスやその関連業界のトレードショーにおいては目新しいテーマとは言えないが、CEATEC JAPANでの焦点の絞り方とその構想の打ち出し方には一歩踏み出したものがあった。主要企業の大半が、クリーンで再生可能なエネルギー製品やそのコンセプトを紹介していた。

日産のスマートハウス、パナソニックのサステイナブル スマートタウン構想がこの例で、燃料費削減対策に加え、災害に備えた電力自給策、そして低炭素で地球に優しい燃料への転換など、大規模なクリーンエネルギー管理技術が紹介された。

「リーフ to ホーム」システムと称された日産のスマートハウスは、天災などによる停電時に、電気自動車日産リーフの蓄電能力で一般家庭の約2日間の電力を供給できる。同様の提案は、三菱やトヨタからもなされている。

CEATEC JAPAN 2011では、家庭から車そして携帯電話にいたるまで、電力の源としての太陽光の紹介が目を引いた。

NTT DoCoMoは、日本人の放射能に対する高い関心に答え、公式見解に頼らず放射能レベルを個人で測定できる携帯ケースを発表した。

企業の社会的責任の観点からは、自立動作・介護支援を目的に開発された「ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)福祉用」をIntel とCyberdyneが共同展示していた。Cyberdyneの最高経営責任者である山海嘉之教授によれば、HALはロボット工学だけではなく、神経科学、社会学、生物学に基づいて設計されている。また、ゲームコントロールとしての可能性にも触れられていた。

社会的責任を意識した展示に加え、CEATEC JAPAN 2011では、タブレットPC・Ultra HD・3DやSONY PS Vitaといった興味深い製品も紹介されていた。

昨今、タブレットPCを取り扱っていない家電メーカーは皆無と言っていいほどで、各機種の特徴を識別するのはより困難になってきている。特にAndroidタブレットのプラットフォームとコンテンツにはその違いを見出せない。メーカーはスタイルやサイズ、処理能力やネットワークの接続性で差をつけようとしている。東芝のAndroidタブレットは、スリムで軽量なデザインに加えその性能で関心を引いていた。ベルリンのIFAで発表されたAT200とは異なりAT700は日本市場向けで、REGZAインターネットTVとのリンク、WiFi仕様で、例えば寝室や書斎・台所などでのもう一台のTVとして位置付けられる。

CEATEC JAPAN 2011では、SONYのタブレットにも人気が集まっていた。AndroidタブレットSは、平面に置いた際に人に優しい視聴角度となるユニークな涙型デザインである。

IFAではSharpが8k4kディスプレイを発表してはいたが、4k(2012年予定)と8k(2020年予定)のサービスがNHKによって既に発表されている日本市場 だけありUltra HDは話題の的であった。2012年には、標準HDTVの16倍の解像度をもつモデルがNHKの4kコンテンツサービス開始に合わせ発表される予定である。

昨年と比べ、ホーム3Dへの関心は静まってはいたものの、3Dに関しては3つの展示が脚光を浴びていた。

その一つは以前から話題を呼んでいた東芝のグラスレス(裸眼)3DTV発売予定の詳細で、一部オフレコの情報もあった。4k2k 55型モデルはHDモデルの4倍の解像度を誇り、日本では12月中旬に90万円前後(約US$12,000)で発売予定である。高価格ではあるが、価格が下がれば現行のメガネ使用モデルの売り上げに影響を及ぼすことは必須で、グラスレスTVの値下げを待つという動きにも注目が集まる。

3Dラップトップでは、SONY が2D VAIOに取り付ければ裸眼で3Dが楽しめる3Dクリップオンスクリーンを紹介していた。3Dイメージを作り上げるレンチキュラー技術が使われている。優れているのは顔認識技術を利用している点で、VAIOの内蔵カメラで利用者の動きを捉え、どの角度からも一様に3Dイメージを作り上げる。これは、年初に東芝がQosimoラップトップで発表した技術に類似している。

また、SONYの3DヘッドマウントディスプレイHMZ-T1も好評であった。2 x 0.7型のHDディスプレイが、仮想画面サイズ750型相当、仮想視聴距離約20mの劇場体験を実現している。今日まで、多くの消費者はパーソナルなホームシネマ体験を望んでいないのではないか、(例えば公共の場において)装着時に周りで何が起こっているかわからないことに不安を覚えるのではないか、もしくはその両方が(MyVuのような)ビデオアイウエアの限られた業績の原因になっているのではないかと考えられてきている。ただ明らかなことは、SONY HMZ-T1と同様の品質、またSONYに匹敵する宣伝力・販売力に支えられた製品が市場には出回っていないということである。販売価格は6万円弱の予定。

もう一つの人気商品はSONYのPS Vitaであった。PS Vitaは3Gと有機ELマルチスクリーンでバージョンアップされたPSPで、2011年12月に日本、2012年初旬にはアメリカとヨーロッパでの販売が予定されている。携帯電話でのゲーム体験とは一線を引いており(少なくともここしばらくの間は…)、5インチのPS Vitaの処理能力と画像品質はPS3に迫る(!!) また、「キルゾーンKillzone」「ワイプアウト Wipeout」といったPSタイトルも魅力である。