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※『フューチャーソース・コンサルティング (Futuresource Consulting Ltd)

vol.2192021年3月31日

コロナ禍後の在宅勤務の展望

2021年3月1日―Futuresourceは米国、フランス、ドイツ、英国の1500人の従業員を対象に、新型コロナウイルス(COVID-19)が勤務パターンに与えた影響と、自宅での仕事に関するテクノロジーの利用について調査を行った。この調査結果では、回答者がコロナ禍の後、勤務パターンの変化が何らかの形で継続することを期待しており、今後の彼らによるテクノロジーの利用状況にも、そのことが反映される見通しであることが示された。

勤務パターンがコロナ禍前の常態に戻る可能性は低い

新型コロナの感染拡大とそれを受けた防止対策が勤務パターンに与える影響は、長期間持続するだろう。あらゆる規模の企業がコロナ禍に迅速に適応しなければならなかったが、その適応方法にはしばしば、スタッフの勤務のし方、職務上の慣行、そして職務が遂行される場所の変更が含まれていた。従業員の側は、同じ空間で働き、生活することに慣れる必要があった。

調査の回答者の40%は、コロナ感染拡大前の12ヵ月間に在宅勤務を一度も行っていないか、またはごく稀にしか行っていなかった。コロナ禍の間に、その割合は3分の1減少した。コロナ禍の後、在宅勤務を行わないか、または週1回未満の頻度でしか行わない以前の状態に戻る見込みであると答えた回答者は、わずか24%しかいなかった。以前に在宅勤務を行っていた従業員と比べれば、相当に大きな割合の従業員が、コロナ禍後には週1~2日の頻度で在宅勤務を行う見通しなのだ。

職務慣行が突然変化したということは、数多くの従業員が、強制的な在宅勤務に対処する準備が整っていなかったということでもある。Futuresourceの調査では、コロナ禍前には、従業員の44%が、在宅勤務専用のスペースへのアクセスを持っていないことが示された。このため従業員は、自宅周辺の共用エリアを確保しなければならなかった。従業員の3人に1人が専用のオフィスルームまたは研究ルームを利用できた一方、64%の従業員は、居間や台所のような共有スペースにオフィスを設置しなければならなかった。

ソーシャルディスタンスのルールを適用するということは、オフィスへの復帰が統一的に行われる可能性が低いことを意味する。従業員は、まず健康と安全を維持することに集中し、その後、スペースの利用と、オンプレミスやリモートワーカーの統合に焦点を合わせる。従業員がオフィスに復帰した時に、多くの従業員が専用デスクを持っていない可能性が高まる。週1日以上在宅勤務を行う従業員の49%は、コロナ禍前にはホット・デスキングを行っていた。彼らがオフィスに復帰した時には、この数字は62%に上昇していると見込まれる。

自宅オフィスにおけるテクノロジーの利用

多くの従業員は、移行をサポートする適切なインフラを欠いていた。アプリケーション、携帯機器、アクセス可能なインフラを持つことは重要であり、それを持たせることは、まさに企業が克服しなければならなかった課題である。その課題に取り組むべく、企業は従業員に対し、携帯機器を与えてきた。

ビデオ会議ツールの利用も、ウェブカメラやヘッドホンの需要を創出した。コロナ禍の状況下、ビデオ会議ツールを介して会議を行うため、従業員の10人に1人にウェブカメラやオフィス用ヘッドホンが与えられている。従業員の在宅勤務用ツールとしてのウェブカメラとヘッドホンの使用量は、今後12ヵ月間にわたっての増加し続ける。従業員の4分の1は、現在の状況が続くうちに、雇用主に対して、これらの機器の一つを自分たちのために購入することを期待している。

ビデオ会議において改善されるべき点

Zoomのようなビデオ会議プラットフォームは、ロックダウンの実施以降、爆発的にユーザーの数を増やした。これは、従業員による異なるプラットフォームの利用にも表れている。ほとんどの従業員は、ビデオ会議が、対面での会議の代役を適切に果たしていると述べている。このことは、コロナ禍によって大きく加速した巨大な文化的変化を象徴している。

しかしながら、従業員の多くは、帯域幅の問題がもたらす貧弱な音声および画像の品質に、苛立ちを感じている。帯域幅の問題により、3分の1近くの従業員がビデオ通話の際にカメラ機能を止めており、このことが音声・ビデオのエクスペリエンスの低下を引き起こしている。また、従業員がビデオ会議に起因する疲労に苛まれ始めているという兆候が表れており、調査の回答者の50%強が、ビデオ通話にますます疲れてきていると示唆している。

ビデオ会議のイノベーションを促す在宅勤務

ビデオ会議の提供業者は、製品の新たな特徴を打ち出しており、機器類を一体化して、従業員により効果的で豊かなエクスペリエンスを提供しようとしている。Zoomは現在、ビデオ会議ソリューションと、異なるハードウェアを一体するいつくかの方法を提供している。これは、ディスプレイからZoom Rooms Hardware as a Service(サービスとしてのZoomルームハードウェア)まで一貫してカバーするものだ。HTCは昨年、Voveヘッドホン向けの仮想現実の協業と会議のプラットフォームであるVive Syncを一般公開すると発表した。企業は、会議と仮想現実のプラットフォームを組み合わせる方法を模索している。Accentureは、Microsoft、AltspaceVRと協力して、「The Nth Floor」と呼ばれるコンセプトを開発中だ。このコンセプトは、地理的に互いに離れた場所にいても、人々が直接交流できる複合現実のエクスペリエンスを実現するものである。

在宅勤務が定着する中、企業はすべてのロケーションのソリューションを必要とする

自宅オフィスの装置や周辺機器が大幅に増加する中、IT部門には課題が重くのしかかっている。そうした装置や周辺機器の急増により、企業のサービスを低下させたり、リモートチームとオンプレミスチームの協働に制限をかけたりすることなく、在宅勤務環境を企業環境に統合する方法について、疑問が提起されている。

同時に、従業員は、オフィス内に自分がいることについて、ますます柔軟なアプローチを採用するようになり、共有知識の開発、職務の調整、そして従業員間のコミュニケーションと関係性の強化を後押しするソリューションを導入しなければならなくなる。

ビデオ会議は対面での相互交流の代用として見られているが、従業員は過度な依存や使用に注意する必要がある。ビデオ会議と仮想・拡張現実ツールとを融合することにより、会議にイノベーションを導入することにより、より豊かな刺激がもたらされ、相互作用が促進される可能性がある。

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