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※『フューチャーソース・コンサルティング (Futuresource Consulting Ltd)

Vol.1152016年6月30日

2016年第1四半期のK-12市場におけるパーソナル・コンピューティング:低基調の経済環境が教育関連の大型入札を直撃し、2016年の世界全体のK-12教育市場は鈍化の見込み

Futuresource Consultingでは、今後K-12 (幼稚園から小学校) 教育分野へのパソコン販売について、国家規模の複数の大型入札が不安定な経済環境の影響で不透明なことから、受難の年になるものと予測している。Futuresourceが発表したこのK-12報告では端末販売台数を追跡しており、その中で2015年は前年に比べて出荷台数が大きく伸長して2桁成長を記録した一方で、今年の第1四半期は前年同期比で15%超落ち込んで480万台となり、ラテンアメリカ地域での落ち込みが最も大きかったとしている。

「第1四半期はベネズエラ、メキシコ、アルゼンチンのプロジェクトすべてが大きく減速し、特にベネズエラのプロジェクトに関しては、石油価格の下落によって国内経済が停滞しているため、年内はこの傾向が続く恐れがあります」と、Futuresource Consultingのマーケット・アナリストPhilip Maddocks氏はコメントした。「ラテンアメリカでは多くのプロジェクトがキャンセルあるいは延期になっており、これ以外の地域でも、トルコやインドで恒例の大型プロジェクトは2016年中に動きがある気配がないことから、年内残りの展望も厳しいままです。」

同報告では地域レベルの出荷台数に注目しており、アメリカ国内市場においても、K-12教育分野への端末販売台数が2,600万台となった異例の3年間の後で、伸びが鈍化していることを強調している。2016年第1四半期の出荷台数は204万台で、これは前年同期比で9.5%の伸びに相当するが、2014/2015年の2桁成長という大きな伸びからは鈍化している。このような鈍化の状況ではあるが、AppleのMacbookとiPad双方が前年比で引き続き減少するなか、第1四半期におけるChromebooksとWindowsの台数は伸長した。

市場シェアという点では、Chromebooksが第1四半期もその勢いを維持し、この期間のアメリカ国内における教育分野向け販売の50%超を占めた一方で、Windowsはアメリカ国内における販売シェアが前年同期比で減少し、全出荷台数の25%未満となった。通常、第2・第3四半期は購入がピークとなる期間で、競争が激化するものと予測される。第1四半期の終わりには、Chromebooksと直接競合することを意図して、300ドルを下回る多数の初心者向けWindows端末が市場に発表された。

世界全体では、第1四半期中はWindowsがナンバーワンOSとしてのその支配的な地位を守り、前年同期比でシェアを6%伸ばし出荷台数の46.1%を占めた。Windowsは特に新興国市場において、対Androidでシェアを伸ばし続けており、Chromeの販売の大部分は、引き続きアメリカ国内市場に限られていて、Chromebook販売の90%はアメリカ国内向けとなっている。

主要OSプロバイダーは教育エコシステム改善の取り組みを継続

2016年第1四半期には、主要OSプロバイダーのすべてがそれぞれの教育エコシステムに大きな変更を加え、同分野の重要性をますます強調することとなった。業界内の供給サイドが速いペースでテクノロジーを進歩させ続ける一方で、往々にして教育者サイドは、市場における複雑な開発スピードと目が回るほどのソリューションやプロバイダーの数に圧倒されている。OSプロバイダーは、自社の商品に機能を追加するとともに、多岐にわたるソリューションのスムーズな統合を確実に実施することで、市場に簡便性をもたらすことを模索している。

「教育市場におけるOSの戦いは、新たなレベルの複雑性を生み出しています。端末の選択が主戦場ではありますが、今後12か月のうちにプロバイダー・エコシステムにおける進展が主な論点になりそうです。教育テクノロジー・エコシステムのフラグメンテーションにエンドユーザーは困惑しており、これがOSプロバイダーによるインハウス・ソリューションの開発につながっています。これまでのところ、こういったソリューションのほとんどが、LMS、SIS、MDMなどの既存第三者ソリューションと融合して機能するよう設計されていますが、市場の進展とともに重複するケースが増えてくる可能性が高いです。どの程度この開発が進むか、そして主要OSプロバイダーが自社商品の付加価値を模索する過程で、第三者との競争を効果的に進められるかが見どころです。我々は、近いうちに端末管理やデータ分析ソリューションに関する発表が行われることを期待しています」とMaddocks氏は続けた。

Microsoftは、教室で使うWord、Excel、PowerPoint、OneNoteといった従来のOffice 365アプリケーションをひとまとめにするとともに、OneNote Class Notebookを通じた授業素材の統合を可能したClassroomを発表した。これとは別に同社のエコシステムに追加されたのは、Microsoft Classroomによる従来の学校生徒情報システム (SIS) の統合を可能にしたSchool Data Sync (SDS) の導入で、これによって教室グループの作成プロセスが簡素化される。

Googleは同社のGoogle I/O年次カンファレンスにおいて、ChromebookプラットフォームにAndroidアプリケーションを取り込むことを発表した。これによって、以前はChromebooksで使えなかったアプリケーションが使えるようになり、オフライン時の可能性に広がりをもたらすというメリットがある。従来のウェブ・ブラウザ体験とは異なり、Androidアプリケーションは端末に直接ダウンロードして、オフラインで実行することができる。また、GoogleのOEMパートナーが、コンバーチブル2-in-1フォームファクタなど、新しいフォームファクタを使ったタッチベースのChromebooksを発表し始めることで、同社が改善に取り組んできたChromebooksのタッチ機能が加わる。この機能は2016年末に向けて広まることが予測される。

AppleはiOS 9.3の発表にともない、iOSプラットフォームに大きな変更を加え、複数の生徒同士での端末共有、授業中の端末制御を可能にする教室アプリケーション、まとめて作成して学区で管理できる管理用Apple IDといった教育に特化した複数の機能を搭載した。同社はまた、サンフランシスコに拠点を置く教育分析のスタートアップ企業LearnSproutの買収を発表した。LearnSproutのプラットフォームは、生徒情報システム (SIS) からリアルタイムで情報を収集し、生徒の成績に関する様々な統計を表示できるダッシュボードを作成する。