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※『フューチャーソース・コンサルティング (Futuresource Consulting Ltd)

Vol.1402017年6月30日

教育におけるVR:本物の学習の応用だが商業化は不透明

没入型テクノロジーは、まったく新しいEdTech(エドテク、教育テクノロジー)の世界と学習の機会を作り出しているが、マネタイズモデルの確立が必要とされている。

コンテンツパブリッシャー、ヘッドマウントディスプレイメーカー、そして教育機関は、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)がもつ学習の限界と便益を学校の教室で懸命に高めようとしているが、多くの場合、無料で提供されるコンテンツを使った方法ではマネタイズモデルが依然として不透明であると、Futuresource Consultingはその最新レポートで明らかにしている。さらに同レポートでは、ARまたはVRヘッドセットの出荷数が2021年までに200万台になると予想している。

関連テクノロジーに加えVR、AR、そしてMRは、様々な領域、あらゆる年代の生徒に対し学習成果を向上させる真の潜在力があると、「Immersive Technologies in Education: A Review of The Market Landscape & Opportunities」レポートで報告されている。

特にVRの便益は、知識の蓄積に優れた受動的な学習とは正反対の参加型学習が基本となっている。

12年生(K-12)までの生徒に対してはこれまで、VR利用に向けた最初の応用としてバーチャルツアーが展開されてきた。これにより生徒は、現実世界のフィールドトリップをしなくても教室外の場所を訪問することができるようになった。

PearsonやMicrosoftがスポンサーとなっているものも含め、多くの有名な実験が行われているもう1つの分野は、医療セクターである。現実では味わえない危険な、もしくは費用のかかる実験を科学者が実験するのをサポートするバーチャルラボも、今後スケーラブルなVRのデプロイメントにつながる機会であるほか、バーチャルツアーの応用事例とは異なり、マネタイズの可能性もある。消費者市場に現在提供されているシミュレーションをベースとする訓練体験と類似した言語学習サービスは、中長期的に組織的な販売につながると予想されている。

アーキテクチャ、製品デザインなど、特定の職業科目に資するクリエイティブなツールも、大学でのVRアドプションに不可欠とみられているが、こうしたソリューションは、業界の中で未来のユーザーに種をまいておこうとするプロバイダーにより無料で提供されるのが一般的である。

Oculus、Google、Microsoftといったヘッドマウントディスプレイ(HMD)メーカーは、教育パブリッシャーやコンテンツプロバイダーと提携して教育用コンテンツを開発しているが、各社が目指しているのは、大規模なアドプションに向けて市場に種をまくことだ。高等以上の教育セクターへのVRヘッドセットの出荷台数は、2021年には70万ユニットに達し、1億5,000万ドルの収入に相当すると予想されている。パソコンベースおよびオールインワンのソリューション(ヘッドセットと携帯端末の同時購入)は、出荷台数のかなりの割合をそれぞれ占めるとみられる。比較的高価格なARヘッドセットの販売は、主要ハードウェアのリリースが予測期間後半に予定されていることから、この時期に加速するだろう。

K-12市場について、HMDをベースとするVR/MR/ARのコンテンツに校内でアクセスする生徒数は、2016年の210万人から2021年には8,270万人にまで増加するとFuturesourceでは予想している。ユースケースの大半は、オールインワンのヘッドセットによりサポートされるだろう。教育市場にサービスを提供している大手IT再販業者は、2016年にマルチヘッドセットVRキットを学校に販売し始めた。

「エンドユーザーへの販売時点でVRをマネタイズすることが課題になるでしょう」と、Futuresourceのアナリストでレポートの共同執筆者でもあるBen Davis氏は話している。「現行VRテクノロジーの限界が意味しているのは、ほとんどのコンテンツが単発的で、「お気軽な」体験であることです。たいていは実体的な教科書に今でも依存しているK-12の教育パブリッシングセクター、3~5年で交代してしまうモデル、直販チャネルで販売していくのは困難です。しかも、K-12教育は、VR体験の提供で使用できる携帯端末の巨大なインストール基盤を持たない数少ない市場の1つです。アクセスの品質、生徒の端末管理とセキュリティ確保という問題があるため、「私用デバイス持込み(BYOD)」モデルの採用は進められないでしょう。つまり、VRをスケールできる程度に教室への導入を図るには、ハードウェア投資を相当しなくてはいけないことを意味します」

そのため、エンゲージメントの点でVRはかなりの便益を生徒にもたらす可能性はあるものの、短期的に応用事例は限定されるほか、コンテンツはユーザーに無料で提供されるか、追加料金なしで用途の広い教育用ソフトウェアソリューションに統合されるだろう。

「コンテンツプロバイダーがVRソリューションと提供コンテンツの統合でマネタイズすることができず、しかも競合他社が付加価値サービスとしてVRコンテンツを提供する場合、企業は競争優位的な立場を失う、もしくは追加利益なしで費用が上積みされるというリスクに直面します」と、Davis氏は続けて述べている。「こうした無料でアクセスできるコンテンツにエンドユーザーが置く価値は、教育パブリッシングセクターでテクノロジーがどのように広がるかを決めることになるでしょう。そして、それが次にハードウェアの需要に影響を与えるのです」

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