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※『フューチャーソース・コンサルティング (Futuresource Consulting Ltd)

Vol.1222016年9月14日

ワイヤレススピーカーとスマートホーム用アプリケーションの分野では、音声が次世代の新機能を開く

コンシューマーエレクトロニクス (CE) ショーIFAが開催され大盛況だが、Futuresource Consultingは、次世代のCE製品で音声が果たす重要な役割に焦点を当ててみる。

2015年7月、AmazonはEchoと呼ばれる同社初のオーディオデバイスを発売した。以来これは、アメリカ国内でワイヤレススピーカーのベストセラー商品となり、今年末までに (発売以来の総計で) およそ390万台の販売が予想され、Amazonの得た売り上げはおよそ7億ドルに達する。Echoは「音声式個人アシスタント」(VPA) の機能を盛り込んだ最初のワイヤレススピーカーだ。この機能はオーディオ業界で大きな関心を呼んだが、これがはたして、10年続いた輝かしい業績の後今年は盛り上がりを欠いているこの市場から強く求められている、売上の新しい柱となるかどうか、多くの注目を集めている。

Echoには、Spotifyをはじめとする人気の高い音楽配信会社やAmazon自身のPrime Music serviceがバンドルされており、さらに、近い将来にEcho専用の音楽配信サービスを低価格で提供するという噂もある。おそらくAmazonプライムに登録していない人たちにも買ってもらおうというのだろう。しかし、一番の関心を集めているのはその音声機能であり、AmazonがAlexaと名付けた音声式個人アシスタントである。Echoにはマイク8個のアレーが内蔵され、Alexaを使って音声でクラウドサービスを利用することができるのだ。そうしてユーザーはメディアの操作ができるし (例えば「ビヨンセのI'm a single ladyが聞きたい」とか「スキップ」と言えばよい)、同じWiFiのネットワーク上にあって所定の機能の付いた機器 (照明や電化製品) の操作もできるうえ、Amazonで商品を注文しDominoでピザを頼みUberでタクシーを手配するなど、クラウド上のコンテンツやサービスさえ利用できるようになる。

Sonosは先日、Amazonとのパートナー関係を発表した。同社は、「Alexa」のような音声式アシスタントが、将来人々が家庭で音楽を聴くときの姿だと考えていると言う。

ユーザーからのフィードバックを見ると、実際に使われる場面はエンターテインメント用がほとんどだが、それでもこの製品は、スマートホームへの興味や関心を呼び起こす手助けにはなっているようだ。NestやInsteon、WinkそれにWemoなどの企業は、ワイヤレススピーカーの人気を良いチャンスと考え、EchoがAlexaの持つパワーを利用してホームオートメーションという機能をコントロールするためのシステム・インターフェースの準備をしている。

その一方で、Googleは自社開発したVPAを使った「Google Home」を今年Q4に市場投入すると発表した。また、中国でAmazonに相当する会社JD.comは、2016年6月にiFlyTek社のVPAを利用した製品「ディンドン」を2モデル発売したが、安い方の価格はわずか$30である。Appleは、iOS 10上の新たな「ホーム用」アプリを使ってSiriがスマートホーム用機器をコントロールする機能を提供する予定だが、それ以外に専用のオーディオ装置などの発表はしていない。

Futuresourceは、ユーザーインターフェースとしての音声はここ2-3年の内に普及が進むと考えている。これまでは画像やタッチ式インターフェースが主流だった。このタッチ式や画像インターフェースは消費者にとって親しみ易く、ビデオやウェブのサーフィンといったアプリケーションには無くてはならないが、例えば自動車の運転中や台所で料理をしている時など、音声とスピーカーの方が使い勝手が良くより適しているような場面もたくさんある。

スマホのユーザーの間でVPA (SiriやGoogleなど) の利用が進み、VPAを利用したスマートウォッチも増え、音声認識の精度や応答速度も上がっていけば、いくつかのアプリケーションでは音声への抵抗感も少なくなっていくだろうとFuturesourceは見ている。天気予報や交通情報を知りたい時や目覚まし時計の設定なら音声の方がむしろ早いし、抽象化レベルも低減できる、つまり、電話機がどこにあるか探してロックを解除し、アプリを立ち上げてキーボードから所定のボタンを押す作業に比べれば、音声ははるかに便利かもしれないのだ。でもそのためには、アシスタントはあなたの声を正しく認識し (正確) 速やかに応答を返さなければならない (低遅延)。

短期のシナリオは単純だし、おそらくはうまく行くだろう。これはこの技術分野のもともとの性質がそうだし、アーリーアダプターの間でもそれほど早く普及が進むとは思えないからだ。長期のシナリオにはいくつか考慮すべき点がある。展開時の地理的な要因 (サポート言語やWi-Fiの家庭への普及率など)、既存のオーディオメーカー (BoseやUEやSonosなど) が自社製または外注によりこの技術をどのくらい組み込んでくるか、このプラットフォーム (機器やサービス) を支えるエコシステムの強さ、そして、果たして人々が機器に向かって話しかけるようになるかどうか、などだ。Futuresourceは、このスピーカー‐VPAのカテゴリーが2017年に470万台に達すると予測している。

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