「ズック」は発表後、三越伊勢丹、パルコ、ヨドバシカメラ、九十九電機など、流通小売業を中心に普及が進んでいる
ハタプロは、AIやIoTに強みを持つベンチャー企業。同社が9月に発表した「ズック」は、フクロウの姿をした愛らしい手のひらサイズのロボットだ。自社開発のAIチップを搭載し、内蔵カメラから得た情報を分析、IoT向けの低価格通信機能を駆使してさまざまなサービスに使える。ベンチャー企業ならではの開発スピードと同時に、提携相手の大企業の安全面、品質への要請も満たしながら実績を積んできたハタプロ。今回のCEATECでは、NTTドコモとのジョイントベンチャー事業で培った、高速かつ高品質な製品開発技術により生まれた「ズック」をはじめ様々な最先端のAI活用製品やIoT向け通信技術LPWA(Low Power Wide Area)を活用した「街のIoT化」の取り組み、台湾の政府機関と取り組む「島全体をIoT化」する国際的なオープンイノベーションの取り組みなどを展示。国内外の様々な大企業 新規事業部や自治体との連携を推進する。
■IoTの黎明期からOEM、ODMの実績を重ねる
ハタプロは2010年に設立。これまですでに、産官学連携の研究開発、製造で多くの実績を積んでいる。大手メーカーや通信会社の依頼を受け、回路、アプリ、通信インフラなどの設計・製造を数多く手掛けており、OEM、ODMをメインに実績を重ねてきた。
具体的には、NTTドコモのR&Dイノベーション本部と提携してジョイントベンチャーを運営したり、国内外の政府機関や大企業の研究部門と業務提携をしている。さらに台湾にも拠点を持ち、台湾政府の工業技術研究院や政府機関と業務提携し、さまざまな取り組みをしている。
■開発スピードと安全性を両立
IoT向けの通信規格である LPWAを活用した新しい電子機器を、企業の要請に応じて開発。NTTドコモとの連携では、LPWAを活用した新しい電子機器による、神戸市、神戸大学とLPWAを活用した見守りサービスで、国内最大規模の実証事業に参加している。LPWA機器の事例ではこのほか、NTTドコモ、三菱地所と共同で災害時に適性判断指示ができる通信インフラの構築で同社の機器が採用されている。
ハードとソフト、両方のエンジニアを擁し、ベンチャーで実績を積んだ経営陣が支える。社員は7人と少ないが、これまでの開発経験から、国際水平分業のネットワークを構築しており、自社内で自動化された工場も持つ。
通常、若い会社や小さい会社だと最終製品を提供するまでのリソースがないことが多いが、ハタプロは「ベンチャーのスピードと大企業の品質管理の両方を備えている点が強み」だと、代表取締役の伊澤諒太氏は話す。
「IoTは通信、クラウド、ソフトの領域にまたがる知識と技術が求められると同時に、スピードが重要視される。特に新規事業の部門からの開発依頼ではそうした傾向が強い。しかし、同時に安全面、品質も求められる。我々は創業から7年間にわたり、大手企業との協業でそうした点が評価されて実績を重ねてきており、IoTの黎明期から経験を積んでいる。新しい技術を応用した通信機器、電子機器を素早く開発して、実用化レベルまで開発できる。技術と開発力の両方を備えている点が強みだ」(伊澤社長)
■自社開発「ズック」で新たな展開
新製品の「ズック」は、100%子会社のハタプロ・ロボティクスが開発を手掛けた。ズック開発のねらいについて、伊澤社長は次のように説明する「創業からこれまで7年間、ロゴが出ないかたちの受託がメインだった。AI、ロボティクスが伸びている中で、技術を生かして、自社で新しいことをやってみようと考えた」
「これまで、インフラ系の通信のプロジェクトに携わる中で、安心・安全の街作り、災害時のインフラなどの重要性を認識した。ズックのような小型のインタフェースとクラウドを連携させることで、本体を安価にできた。将来的には広く普及させることでインフラとして機能させ、街のIoT化に役立てることができればと考えた」
■サイネージと連携し商品をお勧め
ズックは、マイクとスピーカー、画像認証センサー、SIMカード、バッテリーを内蔵している。リアルタイムにクラウド上のAIとデジタルサイネージ遠隔管理システムと連携する。ズックの前に来た人の性別・年齢を認識し、その人にお勧めするべき商品をタブレットやディスプレーで紹介する。このとき、カメラで同時に認識した複数の人間から、家族構成などを推定し、それにあわせたお勧めの商品の設定など、条件定義をクラウド上で設定できる。家族構成や人数、年齢、性別、表情などによってなにをお勧めするかは、店舗側の設定画面で簡単に設定できるため、商品の入れ替えなども店舗のスタッフが行える。
■ビッグデータの収集、解析も
「ズック」で得られた情報はグラフィカルなインタフェースで提供される。エリアごとの時間帯別通行人数を自動計測し、データとして蓄積している。
ズックは、顧客への商品お勧めに加え、マーケティングデータの取得という役割も持つ。複数のズックの情報をクラウド上に集めており、ビッグデータとしてさまざまな情報を抽出できる。リアルタイムに複数のフロア、あるいは異なる複数の店舗の情報の処理も可能だ。
伊澤社長はズックについて「サービス業にとって必要な要素をぎゅっとしぼりこんだ」と話す。「いわゆる愛玩用のコミュニケーションロボットとは異なり、商業用途に特化して、安価に設置でき、手軽に運用できる点が特徴。IoT向けのSIMカードを採用しているので、店内の通信環境に依存しない。ロボットの形はしているが、IoT型のマーケティングツールというほうが正しい」
フレンドリーなインタフェースにしたことで、監視カメラやディスプレー型のデジタルサイネージなどと比べ抵抗感が少ない。すでに、三越伊勢丹、パルコ、ヨドバシカメラ、九十九電機など、流通小売業を中心に普及が進んでいる。
■待ち時間を利用したサービス提供に
ズックの今後の展開について伊澤社長は「ロボットは、中身のチップも自社設計なので、まずはOEM提供をしていきたい。チップとサイネージを組み合わせ、既存のキャラクターとの連携など、要望にあわせた商品提案をしていきたい」という。
「小型でテーブルの上におけるので、車のディーラーなど、待ち時間のあるサービスで顧客接点を増やす手段となる。タブレットとセットにすれば決済も可能なので、多言語対応にして、インバウンドの旅行者の待ち時間・スペースで、レジに並ばずにお土産を販売するといったECの特徴を生かせる。飲食店などで顧客接点を増やす方法としても有効です」
■「島全体をIoT化」台湾政府 経産省との大型プロジェクト
すでに海外での利用も進んでいる。台湾政府の経産省や直轄の研究機関である工業技術研究院と連携して、台湾の島で、官民一体となってのプロジェクトが進んでいる。観光案内所、宿泊所、小売店、島を走る観光バスに案内役としてズックを配置する実証実験を進めている。「観光案内所、島の入り口、移動のインフラであるバス、そして店舗、宿泊所にズックを置くことで、島全体をIoT化するねらい。
「年内に実証実験を完了する。来年にはこの成果を生かして日本でも街のIoT化に役立てたい。インフラ系の会社とのマッチングをしていきたい」と伊澤社長は語る。「IoTは、街ぐるみ、地域ぐるみでやっていかないと進歩しないので、自治体やインフラ系の会社と協力して街のIoT化に貢献したい」
今回のCEATECでは「バックグラウンドの技術的な背景を紹介するとともに、その技術で海外の政府機関、日本の通信会社と連携して新しい取り組みをしており、自社のプロダクトだけでなく、大手との共同事業の取り組みなども発表する」という。
(株)ハタプロ
- 展示エリア
- 特別テーマエリア
- 小間番号
- S01
- URL
- http://hatapro.co.jp/
- 出展者詳細
- http://www.ceatec.com/ja/exhibitors/detail.html?id=10507