株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)はCEATEC 2019に、公共交通の課題解決に向けたソリューション「働き方改革タクシー」を出展している。
タクシードライバーは気楽な稼業なのか
いつでも実車(お客を載せた状態)で無事故無違反、接客も巧みなドライバーなら、タクシー乗務は良い仕事だ。嫌な上司や面倒な部下に悩まされることもなく、好きな時間に好きなだけ仕事して、ガッチリ稼げるはずである。しかしそんなドライバーは、おそらくごくひと握り..。事故のリスクにさらされ、どこにいるか分からない客を求め、長時間の運転に耐える、過酷な仕事という側面も、たしかにある。
2015年よりオートモーティブ分野に参入したDeNAには、タクシー配車アプリ「MOV」の運用を通じ、タクシー会社と利用者からの膨大な利用データという「資産」が、現在進行形で蓄積されている。同社が強みとするAI技術でこれを分析することで、「お客がつかまりやすいのは、いつどの通りの、どちら側なのか」まで、精度良いナビゲーションが可能となっているという。
多くのタクシー事業者は歩合制の給与体系を取る。「素人だと稼げない」「長時間働かないと稼げない」と思われているため、参入は増えぬまま高齢化が進み、ドライバー不足は進行する。しかしAIの助けで確実にお客が拾えるなら、タクシー会社にとっては「短時間勤務」「時給制」という雇用も可能となり、そうした勤務体系が可能ならばやってみようと参加するドライバーも増え、公共交通の危機に歯止めがかかるかもしれない。
公共交通の課題解決のためには、タクシー会社とドライバー、雇用者と労働者の双方にメリットを生む方策が必要であり、そのソリューションを「働き方改革」の一語に集約させたのが今回のDeNAの展示というわけだ。電気自動車のタクシー車両を持ち込み、ドライバーの挙動をカメラで把握し事故削減につなげるデモンストレーションも行っている。詳細はぜひブースでご覧になっていただきたい。
待ちわびたノーベル賞受賞、吉野さんおめでとう!
ちなみに「働き方改革」命名に関わったDeNAフェローの二見徹氏は、電気自動車のビジネスに長く携わってきた人物。
「今年のノーベル賞をリチウムイオン電池開発の吉野彰氏(旭化成)が受賞しました。以前から親しくさせていただいており、長く待ちわびていたので、本当に嬉しい。電気自動車を世に出せたのはリチウムイオン電池のおかげですが、作った側として自負しているのは、これだけ普及しながらも電池に起因する事故を1件も起こしていないこと。リチウムイオン電池は安全な電池なのだとフィールドで証明してきたことが、いくばくかは吉野さんの受賞の後押しになったのではないかと、個人的には思っています(笑)」と語った。