ファナック株式会社はCEATEC 2019で、同社が推進する製造業向けオープンプラットフォーム「FIELD system」の展示を行っている。
製造ラインのOS(基本ソフト)をめざす、「FIELD system」
ファナックと聞けば、富士山麓の黄色い工場で最先端のロボットを生み出す世界的企業、というイメージが浮かぶという人も多いかもしれない。そのファナックがCEATEC 2019で強力に推すのが、「FIELD system」だ。大胆なアナロジーでそれを説明するなら、「FIELD system」とはいわば、製造ラインのOS(基本ソフト)である。
パソコンのOSは、信号の伝送を正しいタイミングで順序よく行うことで、さまざまな周辺機器を制御し、アプリを動かし、部品の集合体をシステムとして機能させる重要な裏方だ。すぐ思い浮かぶのはWindows OSだろう。世の中のプリンタやスキャナをはじめとする多種多様な周辺機器のそれぞれに対応するドライバが存在することが、Windows の強さの大きな理由でもある。
そのWindows と並び立つ形で大きな存在感を示すのが、Linuxに代表されるオープンなOSだ。プログラムの設計図であるソースコードが公開(オープン)されていることは、セキュリティに関わる検証を可能とする。さらに改造や機能拡張に関わるプログラムの開発も自由(オープン)であり、その価値観も含め共有されることで、多くの開発者の共感と参加を呼び、利用者が拡大してきた。
スピードとセキュリティは、エッジ側で
「FIELD system」もLinuxをベースとして構築されたシステムだ。サードパーティの開発者でも自由にアプリケーションやデバイス用コンバータの開発・販売ができるよう、ファナックはSDK(ソフトウェア開発のためのプログラム群)を無償配布としている。これを通じて、製造現場の様々な機器を、世代やメーカの壁を越えて接続可能にすることで、データの一元管理や共有、さらに深い分析と活用を促進する。
製造ラインのプラットフォームとしてはオープンな「FIELD system」だが、インターネットに対してはクローズドの立場を取る。基本的に製造ラインからのデータは、クラウドではなくエッジ側で蓄積・処理する理由を「製造現場にとっては、スピードとセキュリティが何より重要ですから」と、ファナックの小田勝氏(常務理事 ロボット事業本部ロボットグローバルセールス推進本部長兼FIELD推進本部次長)は力説する。そのいっぽうで、すべてを「FIELD system」で囲い込もうというわけではなく、クラウドを使う他のシステムと共存も可能という寛容さも併せ持つ。
同社ブースには、ディープラーニングに特化した高性能GPU搭載のプロセッサ「FIELD BASE Pro」などの展示もある。そうした個々の展示物にも触れながら、「FIELD system」の底流に流れる理念や思想にも触れていただきたい。