2015年内の竣工が予定されている超高層ビル「上海中心大厦」。そこで稼働する分速1080mの世界最速エレベーターについての展示を、三菱電機がCEATEC JAPAN 2015で行った。
アクティブローラーガイド
世界最速のエレベーターは、様々な技術によって支えられている。そのうちの一つが、制振技術として導入されたアクティブローラーガイドだ。これはエレベーターのレールと噛み合うローラーガイドを、レールの左右手前の3カ所に配置したもの。センサーが揺れを感知すると、それを打ち消す方向にかご室そのものを移動。これにより横振動を1/2以下まで低減している。
従来におけるエレベーターの制振技術は、レールの据え付け技術に頼る部分が大きかったという。とはいえ、建物が歪んだり揺れたりするうちに、経年劣化が生み出すレールの歪みを防ぐことは困難だった。しかし、アクティブローラーガイドであれば、レールに多少の歪みがあっても、揺れを緩和できるようになる。
また、エレベーター室が高速で動くことによる風切り音については、かご室に流線型のカバーを取り付けることで解決した。これは新幹線の形状をモデルに設計したもので、従来よりもカーブをより滑らかにして、以前のエレベーターと同等の静粛性を確保。空気抵抗を減らすことで、巻き上げ機への負担も軽減している。
世界最速の座を奪還
一方、安全面においては、非常止めに1000度までの摩擦熱に耐えるファインセラミックシューを採用。高速走行時にも十分な制動性を維持できるという。また、非常止めが作動しないケースを想定し、棒状の部分がエレベーターを支えて縮んで落下速度を抑える緩衝器についても、新たな改良が施された。世界最速での落下に耐えるのに必要となる緩衝器の長さが、多段式の採用により従来の半分となる10メートル程度まで抑えられている。
その他、エレベーターの高速化を支えるモーターについては、業界では使用例の少ない二重三相モデルを使用。巻き上げロープも新開発のsflex-ropeを採用したことで、強度を確保しながら必要な本数を減らしている。これらは、巻き上げ機を小型化する上で、大いに貢献しているとのことだ。
会場では上海中心大厦のエレベーターにおける、制振・静音システムを疑似体験できるシミュレーターを用意
「上海中心大厦」の竣工前には、世界最速だった超高層ビル「台北101」のエレベーター。これに記録を塗り替えられたのが、三菱電機が開発した横浜ランドマークタワーのエレベーターだった。「上海中心大厦」のエレベーターでは世界最速の座を奪還するとともに、横浜ランドマークタワーのエレベーターで培われた技術を採用。そこに、さらなる改良を施すことで、快適かつ安全ながら、コンパクトなエレベーターシステムを完成させている。
- ブース番号
- ホール3 3L113
- 関連リンク
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三菱電機(株) : http://www.mitsubishielectric.co.jp/