触覚というのは、目を閉じていても感じられるものだが、可視化するのは非常に難しい。
相手がどのくらいの力で物を掴んでいるのかを見ただけで判断できないからだ。力触覚通信とは遠隔操作で、柔らかいものに触っているのか、ザラザラしている物に触れているのかを感じることができるという‟リアルハプティクス”と表現される技術なのである。
慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科の大西公平教授は、これまでに作られてきたロボットや機械は‟負けない機械”だと話す。
これまでの機械は、こちらに来なさいと命令すれば、途中にある障害物を破壊してでもこちらに向かって来るし、これを動かしなさいと命令すれば、それが壊れてしまっても動かそうとする。つまり‟負けない機械”なのだ。
ところが人間は‟負ける機械”だ。目の前の物を動かすのに、それが壊れてしまうほど力を加えるようなことを人間はしないからだ。
環境に倣うのが負ける機械、負けない機械は環境を壊してしまうのだ。今ある機械やロボットに本来人間が持っている‟負ける機能”を付けようというのが力触覚通信が拓くIoA(Internet of Actions)世界だ。
これまでの機械の自動化の歴史では、「力触覚」は実装されずに放置されてきた。実はそれが現場の更なる自動化を難しくし、さらには安全・安心すら危うくしているという。
慶應義塾大学ハプティクス研究センターは、革新的理論と高速ICTによって鮮明な力触覚通信を実現し、人間の優れた判断力と柔軟さを、機械に協調させインストールすることを可能とした。
CEATEC JAPAN 2015では、「人間の行為」と「機械の行為」をネットワーク上で連結・連携させて、統合された行為を実現する IoA “Internet of Actions” 世界を展示、紹介する。
展示ブースでは、力触覚通信を実装したロボットハンドを遠隔操作し、ポテトチップスを掴むという、力触覚を伴う作業の魅力を体験することができる。
スレーブ側での把持・移動動作をマスター側から操作した時、力触覚通信が有ればあたかも自分の手と同じ感覚でものを掴めるが、力触覚通信を切ると劇的に作業が困難になるのを体験できる。『百聞は一触に如かず』である。
機械に力をコントロールさせようという研究は、これまでにも研究されてきたが誰も成功していなかった。今回は、力触覚をロボットに甦らせ、人間のように柔らかいものでも固いものでも触れるようにするための基本技術を展開する。
産業界のみならず、災害救援・復旧、医療・福祉、土木など想定外の事象が起こる環境で活躍する人間らしいロボットが望まれている。「力触覚」を遠隔地に通信し、力通信や力動作を自由に操る(縮小、拡張、再現)技術をロボットに実装することで、人の優れた能力(判断、柔軟な操作)と、機械の力強さ・確実さが協調する最強システムにより市場を創出されるのだ。
ものづくりの匠の技の力加減や動きをデータ化して後進の指導に用いたり、有名なマッサージ師の指先の力加減をデータ化し、それを機械が完璧に再現することによって、誰でも、何処ででも、その恩恵を受けられる日が来るのかもしれない。
- ブース番号
- ホール5 4N65-48(ベンチャー&ユニバーシティエリア)
- 関連リンク
- 慶應義塾大学 ハプティクス研究センター
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