台風と衛星打ち上げで始まる
台風18号の関東直撃を受け、開催前日の記者会見が中止。波乱の幕開けが予感されたCEATEC JAPAN 2014。しかし台風一過の10月7日(火)、見事に晴れ上がった空のもと初日を迎えることができた。
この日は14時すぎに気象衛星「ひまわり8号」の打ち上げが成功(CEATEC NEWS Vol.038)。衛星を製造する大手電機メーカーだけでなく、小型衛星ベンチャーや衛星写真サービスなど、宇宙関連企業の出展が目立ち始めた今年のCEATEC JAPANの一側面を象徴する出来事となった。
ノーベル賞で沸き立つ
ホテルニューオータニ幕張で来賓臨席のもとオープニングレセプションが開催(CEATEC NEWS Vol.042)のさなか、ノーベル物理学賞受賞の大ニュースが飛び込んできた。
「世界が抱える課題にICTの利活用で対応し、安心・安全・快適な社会を実現」(佐々木則夫CEATEC JAPAN実施協議会会長)
「2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックでは、日本の高い技術力と企画力をアピールする重要な機会。世界最先端の社会全体ICT化を推進したい」(西銘恒三郎総務副大臣)
「直面している課題を確実に解決していくことが、日本経済を再生させていく」(山際大志郎経済産業副大臣)
今回のノーベル物理学賞受賞は、上記に掲げた主催者・来賓のコメントで述べられた問題解決と産業創造につながるイノベーションのまぎれもない実例だ。日本の創造力と技術力にあらためて関心が集まった。
また受賞者の一人である中村修司氏の実兄、中村康則氏が社長をつとめるFA・システムエンジニアリング株式会社(本社・松山市)が医療用裸眼3DシステムをCEATEC JAPANに出展しており、取材陣が殺到するシーンもあった。
密接に関連するロボティクスとモビリティ
ここ数年のCEATEC JAPANを華やかに彩る出展テーマといえば、「ロボティクス」と「モビリティ」、そして「エネルギー」と「デバイス」の分野。なかでもロボティクス分野の製品やデモンストレーションは、多くの来場者やメディアの注目を集めた(CEATEC NEWS Vol.051, 073, 081)ほか、パーソナル用途のコミュニケーションロボット(同 Vol.062, 065)、ヘルスケアロボット(同 Vol.087)も出展された。
モビリティ分野では、ICT技術を活かしたテレマティクスサービス(同 Vol.091)や自動走行システム(同 Vol.082)が出展された。パーソナルモビリティとして出展された次世代車いす(同 Vol.101)は、健常者だけでなく実際の電動車椅子ユーザーの試乗も受け入れていた。ロボットで培われた制御技術がモビリティの未来を明るくしている。
エネルギーとデバイスは表裏一体
エネルギー分野では、CEATEC AWARD 2014経済産業大臣賞に輝いたNECのエネルギークラウド技術に注目が集まった。100万台規模の家庭用蓄電池を束ね、電力系統の周波数制御・負荷制御機能を備えた大きな“仮想蓄電池”として機能させる制御システムを提案。京セラのソーラー発電所(CEATEC NEWS Vol.028)のような出力変動が不可避の再生可能エネルギーに対する調整力を発揮できる点が評価された。将来的には、家庭レベルの再生可能エネルギーをも束ねた“仮想発電所”の実現につながる技術と言えるだろう。
モビリティとエネルギーが重なる部分では、ホンダの水素燃料ステーション(同 Vol.064)などが実績をアピール。正式発表が秒読みのトヨタの燃料電池車も注目を浴びた。
一方、着々と進むエネルギー革命を支えるのがデバイス技術。CEATEC AWARD 2014グリーンイノベーション部門で準グランプリを受賞した、オムロンの振動発電デバイス(同 Vol.095)や、自動車の減速時のエネルギーを急速充電する日本ケミコンの電気二重層キャパシタ(同 Vol.080)などは、エネルギー問題の解決にミクロンレベルやナノレベルの技術が不可欠であることを雄弁に物語っている。またワイヤレス給電技術(同 Vol.030, 095)も、ある意味でエネルギー問題。こうした問題の解決にも新たなデバイスを生み出す力は欠かせない。
CEATEC NEWS CENTERレポーターはこう見た
CEATEC NEWS CENTERは、出展者情報やイベント情報など最新の話題を独自取材でお伝えしてきた。取材に関わったレポーターのコメントで、5日間の会期を振り返る。
部品メーカーの本気を感じた
「自動車メーカーのCEATEC JAPAN登場(2012年~)で、デバイス各社の本気度が増しているような気がしました。信頼性や量産品質で最もレベルの高いデバイスを求めるのが自動車メーカーなので、そこでの実績は大きい。部品メーカー、デバイス各社は頑張っていたな、と思います」(レポーター・AT)
「LSIの設計や製造など、かなり専門的な分野からの出展もありました。技術的に高度で、取材も大変だったのですが、欧米の圧力を押しのけてきた国産技術がちゃんとあり、知らないところで日本を救ってくれている人たちがいたんだと改めて実感できましたね。」(レポーター・MS)
人と機械の距離感を探る
「人と機械のちょうどよい距離感を見出そうと、各社が悩み努力を重ねているんだなと感じています。複数の出展があったスマートグラス(CEATEC NEWS Vol.066, 063)や、ヘルスケア(同 Vol.046, 075, 094)関連の展示を見てとくにそう思いましたね。」(レポーター・N)
見せ方への工夫が光った
「IoT(インターネット・オブ・シングス)が大きくクローズアップされたのが今年の特徴でしたし、恐竜しかり、卓球しかり、モノを見せるだけでなく見せ方に工夫を凝らした展示も多かった。『どうなってるの?』と身を乗り出させ、そこからより深く理解してもらおうとする、意欲に富んだ展示が目立ったと思います。」(レポーター・AG)
「私は卓球部だったので卓球ロボットを大人げなく負かしてしまいました(笑い)。」(レポーター・MS)
熱帯雨林の森を未来につなごう
「高い位置から会場を見渡すと、きらびやかで色とりどりの展示が並ぶさまが、なんだか熱帯雨林の森のように思えてきました。大メーカーからベンチャー企業、個人企業、大学の研究室まで。巨木もあれば、ツルやツタや、足元の草花もあり、受粉を担う鳥や昆虫もいる。それらが渾然一体となって生態系をなしているのだというイメージです。会期前には出展を取りやめた大メーカーが話題になりましたが、自然界と同じで、巨木がなくなった場所には光が差し、新たな芽吹きがありました。
会期中の青色LEDのノーベル賞受賞のニュースが象徴的でしたが、あのデバイスは基礎研究から応用研究、そして実用化までが日本国内で進められたという特異なケース。このように多様な企業が息づく森があったからこそ世に出た製品ではないかと思います。種の多様性に富んだ森を盛り立てていくことが、日本の産業力と活力の維持に不可欠なのだと改めて感じています。」(レポーター・MK)
以上でCEATEC NEWS CENTER 2014をクローズいたします。
取材にご協力いただいた関係企業各位にあらためて感謝の意を表します。(記事:MK)