フリーハンド(道具不要)のインターフェイス
古くはパンチカードから始まった人とコンピュータと人間のインタラクションは、キーボードを使ってコマンドを入力するCUI、マウスやトラックパッドを使うGUIを経て、人間がもともと持っている手指や音声を使ったNUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェイス)に進みつつある。代表例は指そのものをポインティングデバイスとするスマホ/タブレットのタッチ操作だが、JUICE DESIGNが開発した「TeLePa」は、画面に手を触れる必要すらないフリーハンドのNUIシステムだ。次のような仕組みで動作する。
1)画面の前に立つ人をモーションセンサーで認識し、そこから手の形状を切り出す。
2)手のシルエット(影絵)を、コンテンツが表示されている画面にオーバーレイ表示させる。
3)表示コンテンツのHTMLコード(アンカータグ)を解釈し、ハイパーリンク部分にピンの画像を表示させる。
4)手のシルエットでピンを“つまむ”操作が、マウスクリックやタップ操作に相当。
インタラクティブな操作感を文字で表現するのは難しいが、操作を続けているとピンの軸の張力や抵抗など、あるはずのない“感触”が手指に伝わる気さえしてくる。この“感触”の源であり、システム特許の核心部分でもあるのが「移動してきた第1の画像(手指のシルエット)から、第2の画像(ピン)が逃れるように移動制御する」(特許公報より引用。特許第5507773号、平成26年3月28日登録)という点だ。
影絵あそびから着想を得る
諫山太郎社長(36)はこの着想を、布団の中で1歳の息子と遊んでいたときに得たという。
「電灯を消し、スマホのLEDライトで影絵あそび――片手だけのイヌの影絵で噛み付きごっこ――をしながら、“つまむ”という動きの可能性を感じました。幼児でも簡単に操作できるインターフェイスが作れるのではないか、と。」
アイデアを形にする鮮やかな手際
実家は兵庫の醤油蔵で、大学時代はバイオインフォマティクス(生命情報工学)の研究に勤しんだ諫山社長は、実は大手特許事務所で10年の実務経験を持つ弁理士でもある。アイデアの質を見極め、それを知財化するノウハウを十二分に持ち合わせている点は、IT関連のスタートアップ企業として異色と言っていいだろう。さらにアイデアを形にしていく手際も鮮やかだ。
「事業化のためにはデモシステムが必要なので、世界で300台しか提供されなかった次世代KINECTの開発者版をMicrosoftから入手しました。KINECTのソフトウエアは自作しようと上下巻700ページの参考書を買って挑戦しましたが挫折。そこでその本の著者に連絡をとって依頼しました。素晴らしい出来ですよ。」
手のシルエット(影絵)を、コンテンツが表示されている画面にオーバーレイ表示させる。
(photo by Sachie Hamaya)
製品の動作状況は、YouTubeで『Touch-Free Web Browser』(https://m.youtube.com/watch?v=mal7LrxEzY4)でご参照ください。
次世代KINECTをモーションセンサに使用
デモシステムにはこの秋から市場に出回り始めたMicrosoft社のKINECT for Windows v2センサー(市価2万円程度)を使用。コンテンツのハイパーリンク箇所を示す“ピン”の画像や手のシルエットをオーバーレイさせる仕組みはGoogle Chrome ブラウザの機能拡張で実現している。つまり非常に安価に仕上がるNUIシステムでもある。
そして、アイデアをビジネスに結びつける手腕が問われるのは、これからだ。
「このシステムがゲーム機とどう違うのかを聞かれることも多いのですが、今のところ興味を示してもらえるのはデジタルサイネージなどの分野です。カスタムメイドだったデジタルサイネージ用のコンテンツが、HTMLを書くだけで作れる点は、非常に敷居を低くしていると思います。FLASHやJAVAを使ったリッチコンテンツへの対応は今後の課題ではありますが、私自身も考えつかないような用途やアプリケーションはまだまだあるはずだと思っていますし、そういうアイデアとの出会いの場としてシーテックジャパン2014に期待しています。」
(記事:MK)
株式会社JUICE DESIGN
ブース番号 | 3N21 |
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日時 | 10月07日 11:00-12:00 |
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