高まったデンシティ(密度)とインテンシティ(本気度)
CEATEC JAPAN 2015は、昨年までに比べ会期が4日間と1日短縮され、トータルの入場者数こそ減少したが、1日あたりで見てみると来場者は10%も増加している。この数字は会期中会場に張り付いて取材を続けたCEATEC News Center のレポーター陣の実感とも一致する。「IoT」「グリーン」「安心・安全」「ヘルス」「3D」「ハプティクス」などのキーワードが飛び交った今年は、昨年よりさらにデンシティ(密度)とインテンシティ(本気度)が高まっていたように感じられた。その展示会場の空気感を、News Centerレポーターのコメントで紹介する。
♦「魅せる技術がすごい」
来場者の方は、ロームの「羽ばたく折り鶴」を見たい展示の一番に挙げる方が多かったですね。女性や子供もシンプルに楽しめるし、エンジニアは驚くし、外国プレスも心を奪われた。技術がすごいのはもちろんですが、そのすごさをひと目で分かるように見せるプレゼンの技術もすぐれていたからだと思います。
「昨年のオムロンさんの卓球ロボットに刺激を受け、うちも知恵を絞りました」という企業の声もありました。今年の「羽ばたく折り鶴」も多くの出展者に刺激を与えたはず。「技術を魅せる展示」の、来年が楽しみです。(レポーター A.B)
♦「卓球ロボと、今年は戦えなかった」
そのオムロンさんの卓球ロボット、私は卓球経験者なので去年は大人(おとな)気なく打ち負かしてしまいましたが、今年は行列が長すぎて対戦できませんでした(笑)。ただ取材してみて、昨年とは違う進化の方向性が見えていましたね。「ラリーをなるべく続けられるような返し方をする」というのは、つまり人と機械の協調作業ってことです。
自動運転を支援する技術やデバイスなど、他の多くの展示でもそういった方向性が見られました。単に機能や性能だけでなく、やさしく人間に歩み寄ることに努力をしている。洗濯機がTシャツをたたむのも、電話がロボット形なのも同じこと。機械の進化は、そういうフェーズに入りつつあるんですね。(レポーター K.O)
♦「来場者の熱を感じた」
だいたいが小さくて、キラキラしていますし、ソフトウェアやソリューションだと形がなかったりするわけで、カメラマンとしてはひじょうに撮りにくい対象物ばかりでした。それでも出展している方、見に来られている方の熱はすごく感じました。それが少しでも伝わるようにと撮影したつもりです。(カメラマン H.N)
♦「2020年へのカウントダウンが聞こえてきた」
従来スマートデバイスと呼ばれていたものは、いくら機能がすぐれていてもデザイン面で「?」と思わされるものが少なくなかった。しかし今年は、デザインも機能もスマートな、名実のともなうスマートデバイスが多く生まれていたように思いました。
また8Kや10Kなどの映像展示ですが、昨年まではデモはすごくても、コンテンツは同じものの繰り返しという展示が多かった。しかし今年は中継映像なども加わり、コンテンツが飛躍的に豊富になっていました。コンテンツが充実してきたということは、着実に実用化が近づいている、つまり「2020年へむけてのカウントダウンが、よりはっきり響き始めている」ということだと思います。来年はもっとすごいものが見られそうです。(レポーター T.M)
♦「熱帯雨林の新芽がまぶしい」
昨年は「熱帯雨林の新陳代謝のように、巨木が朽ちた場所には光が差し込み、新たな芽吹きが期待される」と書きました。ベンチャーやスタートアップ、大学などの元気の良い出展者が注目を集めました。「新芽の緑が濃くまぶしくなって」おり、ヨミが当たって嬉しいです(笑)。
CEATEC JAPANのような、大規模で歴史ある展示会ならではと思ったのが、そうしたベンチャーやスタートアップと大企業に出会いの場を提供していることです。いわば「交配」が起こっているわけですね。
象徴的なのがアルプス電気/16Labの指輪型デバイスではないかと思います。16Labにはファームウェアをスクラッチから書き起す、スティーブ・ウォズニアックのようなハードウェアハッカーがいて、いっぽう高性能の極小LSIを量産するのは大企業にしかできないこと。CEATEC JAPAN 2013での展示を見て16Labがアルプス電気にコンタクトしたのが、共同開発の始まりだったそうで、そこからわずか2年でワールドクラスの新規なデバイスが誕生した。そういう出合いをもたらすだけの、デンシティ(密度)とインテンシティ(本気度)があったとわけです。
おそらくそのようなストーリーはすでに水面下でいくつも進行中で、来年以降のCEATEC JAPAN でも姿を表してくれることでしょう。(レポーター M.K)
以上でCEATEC NEWS CENTER 2015をクローズいたします。
取材にご協力いただいた関係企業各位にあらためて感謝の意を表します。(記事:MK)