スタンレー電気株式会社は、殺菌用途などを想定し開発中の、深紫外領域(波長265nm)の光を発するLEDモジュールをCEATEC JAPAN 2016に出展した。
紫外線そのものは目に見えないため、配光を制御して蛍光体に照射し緑色の光を放つ様子を見せている。
殺菌灯と「水俣条約」の知られざる関係
青くゆらめく殺菌灯(UV冷陰極線管)の輝きは、ガラス管に封じ込められた水銀の蒸気が放つものだ。電流(電子線)でエネルギーを与えられた水銀の原子が、受け取ったエネルギーを深紫外領域の「波長254nmの紫外線」として放射する。この波長は生物のDNAのサイズと似通っており、DNAに大きなダメージを与える。高い殺菌力はそのおかげだし、「オゾンホールの成長で、宇宙からの紫外線が増えると、皮膚ガンになりやすくなる」というのも、同じ機序によるものだ。
この殺菌灯に不可欠だった水銀を、自然界にこれ以上拡散させないための国際条約が2013年に熊本・水俣市で取り決められた。UNEP(国連環境計画)がとりまとめた「水銀に関する水俣条約」である。条約に署名・締結し、批准した国は今年4月現在で32か国。「50か国が批准して90日後に発効する」ことになっており、遠からずその日はやってくる。
ノーベル賞の青色LEDの、さらに上を行くLED
そうした背景もあり、スタンレー電気は殺菌用途に使える深紫外LEDの研究開発に取り組み、UV陰極線管の波長254nmに近い「波長265nmの紫外線を出すLED」の開発に成功している。
このLEDは、一昨年のノーベル物理学賞を受賞した青色LEDよりもさらに波長の短い(エネルギーの大きい)光を出すために、青色LEDで使われたIn(インジウム)ではなくAl(アルミニウム)を使ったAl-GaN(アルミニウム-窒化ガリウム)の結晶を、MOCVD(有機金属気相成長)法という方法で創製した。原子レベルの精妙なものづくり技術を駆使して作られたLEDで構成されるモジュールが、今回のCEATEC JAPAN 2016で展示されているのだ。
まだモジュールそのものも開発中であり、当面は殺菌用途を想定しているが、光通信や樹脂成形(紫外線硬化)、DNA分析などの用途でも検討が進んでいるという。同社では「来年度中には出荷を始めたい」としている。
出展されたLEDモジュール(Al-GaN結晶)の拡大写真と諸元
- 展示エリア
- CPS/IoTを支えるテクノロジ、ソフトウェア
- 小間番号
- 6C152
- 関連リンク
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スタンレー電気株式会社
http://www.stanley.co.jp/ - 出展者情報
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スタンレー電気株式会社
http://www.ceatec.com/ja/exhibitors/detail.html?id=6858