浴衣姿の女性がうちわを扇ぐと、投影された映像がヒートマップのように変わる――。“風の見える化”をうたって、展示を行っているのがKOAのブースだ。パネルに432個の風センサを内蔵し、感知した風速の変化をプロジェクタで投影している。
“風の見える化”を実現した同社のセンサ技術
この風センサはKOAが10年近く開発を進めてきたもの。元々は電子部品メーカーとして抵抗器を製造していたが、その技術を応用したものになる。原理は簡単だ。風のあたった電熱線が冷えることで変化する抵抗値をもとに、その風速を計測している。それを、16×16×7ミリ程度のモジュールにまで小型化しているのが、同社独自の技術だ。
KOA株式会社 新事業開発グループ プロフィットマネージャーの坪木光男氏によると、製品化は17年を目標にしているとのこと。既存の風量計は1台数万円、高いものでは100万円程度のものもある。しかし、同社の風センサであれば、精度では劣ってもコストは大幅に安い。
「モジュール化されているので、機器への内蔵も容易です。そもそも、組み込み可能な風量計というのが存在しませんでしたので、全く新しい製品になると思います」
同時多点計測でエリア内の風の流れをつかむ
風センサは従来にない製品のため、その用途については現在模索しているところだという。ただ、CEATEC JAPANなどで5年前から出展する中で、その問い合わせについても徐々に増えつつあるようだ。わかりやすいところでは、自動販売機のファンの故障検知などにも引き合いがあったという。
また、単価が安いことから、同時多点観測ができることも風センサの強みだという。風の様子は周辺環境によって日々変化し、数万円の風量計で毎日場所を移動しながら計測しても、エリア全体の計測結果としての価値は限られる。しかし、風センサであれば、すべての観測地点に設置して、風速の変化を同時に定点観測することが可能だ。
「例えば、複数の地点で風速を計測することで、町の中をどのように風が通るのかを調べることができます。風速の強いところでは、安全対策としてドローンの使用を禁止するなどの処置ができるわけです」
既に製品としての形はできているため、現在は品質保証や仕様の部分を詰めているところだという。IoTの普及によって組み込み型のセンサにニーズが集まっているが、風センサはその一つとして注目を集めるかもしれない。
ブースで出展されていた風センサ。薄型、小型、ヘッド分離型の3タイプがあり、薄型は厚さ5ミリまで小型化されている
- 展示エリア
- CPS/IoTを支えるテクノロジ、ソフトウェアエリア
- 小間番号
- 5C48
- 関連リンク
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KOA株式会社
http://www.koaglobal.com/