AI・人工知能パビリオンで、大きなロボットアームやドローンを飛ばしているブースがある。その近くでは地味ながら酪農をICT化するサービスにAIを応用している企業もあった。
リモコンの微妙な操作をAIが学習
ドローンやロボットアームのデモを行っていたのは「Preferred Networks Inc.」だ。ドローンのデモは、一見するとプログラミングされたドローンの動きにも見えるが、制御はすべて人工知能が行っている。
ドローンはライトで示されるゴールを目指して自動的に飛行するが、このとき、LEDの赤いラインが現れると、そのラインを超えての飛行は禁止され、ラインを迂回しなければならない。ゴールもラインもランダムに出現するが、そのつどドローンが判断し、自律的に飛行を続けるというもの。
現状はドローンのカメラやセンサーがゴールやラインを認識するのではなく、背後にあるコンピュータがランダムに、デモ空間を再現した疑似的なエリアに発生させている。人工知能は、その情報を受け取って、AIが下した判断でドローンのリモコンに制御信号を送る。
つまり、デモのゲームそのものは、コンピュータ上のシミュレーターで繰り広げられているのだが、それを再現した会場のデモ空間でドローンが同じように飛ぶように人工知能がリモコンを操作していることになる。このとき、実物のドローン自体は、市販のキットでありリモコンも普通のプロポだ。プロポのための微妙な制御信号が必要だ。なめらかに飛行するためには、単に右や左といったコマンドレベルの操作では、実機の動きとどうしても差がでてしまう。
この問題に対応するため、同社の人工知能は、デモのルールどおりゴールを目指すAIと、実機の動きを補正するためのAIを同時に動かしている。ひとつのAIアルゴリズムを個別にチューニングするのではなく、タスクに合わせた2つのAIアルゴリズムを同時に動かし、その結果を学習させる。それぞれのAIアルゴリズムは深層強化学習を使っている。
色・形状で複数の部品を選別できる産業ロボット
ロボットアームは、人工知能による画像認識のデモだ。箱の中に入ったさまざまな日用品、雑貨を、カタチや色で前方の棚(シェルフ)に分類するという処理をこなす。工場の産業ロボットなども画像認識によって部品を選んで正しい場所に取り付けたりできるが、平均的な産業ロボットは、事前に登録された部品の形状を認識しているにすぎにない。また、部品が一定の方向で並んでいないと認識できない。
近年は、部品がバラバラになっていてもつかめる場所をAIが判断するものも開発されているが、任意の形状の複数の部品がバラバラに入っている状態での識別、つかみ取りは難しい。Preferred Networksの画像認識アルゴリズムは、それがある程度可能だという。
また、近くでドローンがアームと離れた場所のプラットフォームの間を行き来している。これは、ロボットが選別した品物を所定の場所に置くと、相互に通信したドローンがその荷物を別の場所に運んでくれるという機能を想定したものだ。
牛の受胎適期・疾病兆候を人工知能でとらえる
ファームノートは、同名の農業ICTサービスを展開する企業。酪農家向けに、牛の個体管理、餌やり、けがや病気の記録、履歴管理、成長記録といった日々の作業を、タブレットとクラウド上のサーバーが可視化してくれる。
ファームノートはすでに1400もの牧場で導入されているが、8月にリリースした機能に人工知能を使っている。「ファームノートカラー」というデバイスを牛に取り付け、その情報から牛の受胎適期や疾病の兆候をとらえるというもの。
ファームノートカラーの実態は、加速度センサーでありモニタリングしている情報は、牛の運動量や行動(運動・休息・反芻)のみだ。温度センサーや脈拍計、GPSなどは搭載していないそうだ。これだけでも、運動量の変化やパターンによって人工知能は牛の状態を判断できるという。
ファームノートカラーは、牛の体(首の少し左側)につけっぱなしにしておく必要があり、屋内、屋外でも安定して機能する必要がある。そのため部品やセンサーはなるべくシンプルに頑丈に作られている。電池は交換可能だが、通常なら3年は交換せずに動くそうだ。
- 展示エリア
- 特別企画エリア
- 小間番号
- 5P-65
- 関連リンク
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Preferred Networks
https://www.preferred-networks.jp/ja/ファームノート
http://farmnote.jp/