NewsCEATEC ニュース

022

ディープラーニングで注目を集める Preferred Networks社
AI、映像解析を駆使したDroneによるブースデモを実施

カテゴリー : 特別企画エリア

Preferred Networks社は、同社の前身であるPreferred Infrastractureの設立以来、機械学習についての研究・開発を進めている。新進のベンチャーでありながら、ディープラーニングを駆使した大手企業との技術提携などの実績を重ねており、ディープラーニングを駆使した産業改革の若き牽引役として期待がかかる。

(右から)インタビューに応じていただいたPreferred Networks リサーチャーの丸山氏、エンジニアの渡部氏、米辻氏

相次ぐ大手企業との技術提携 ディープラーニングの産業利用で期待

今年4月には、ファクトリーオートメーションの世界的なサプライヤーであるファナック、シスコ、ロックウェル・オートメーションと製造・生産の最適化のためのアナリティクスを提供するプラットフォーム開発に関する協業を発表。また、7月には、DeNAと、インターネットサービスにおけるディープラーニングを用いたデータ価値の最大化を目指した合弁会社設立を発表。多様な産業領域へ向け、ディープラーニングを含む機械学習技術を駆使したソリューション提供に踏み出している。

海外においても、同社のディープラーニングの技術力は注目を集めている。6月に開催したディープラーニングの国際的な競技、Amazon Picking Challengeでは、2つのタスクのうち1つが2位、もう一つが4位を獲得。これは、カメラセンサーからの画像や3Dマップから、物体を認識して位置を割り出し、その物体に対する最適なアプローチを求めるもの。正確かつ短時間に結果をもたらすことが求められるこのタスクの処理に、自社で開発の深層学習フレームワーク「Chainer」(チェイナー)を用い、たった3カ月で構築したプログラムで世界の強豪をしのぐ成果を収めている。

世界の競走に伍していくPreferred Networksの位置付けと強み

ディープラーニングは、さまざまな産業での活用が期待されていると同時に、今後、世界での競走もますます激しくなると見られている。Preferred Networks社は、そうした競走を勝ち抜いていくための強みについて、Preferred Networks エンジニアの渡部創史氏は、次のように説明する。

「Preferred Networks社が、ディープラーニングを中心とした機械学習やリアルタイム分散協調型コンピューティングを提供する主な領域は、デバイスを駆使する産業分野で、特に現在は自動車産業、産業用ロボット、バイオの3つの分野にフォーカスをしており、Googleなどが進めるコンシューマー領域での事業展開とは対象となる領域が異なります。GoogleやFacebookにおけるディープラーニングと比較されることがありますが、対象としている領域が異なるため、簡単に比較するのは難しいと思います」

「産業分野でのディープラーニングの研究・開発では、それぞれの分野で求められていることを深く理解することが重要ですが、我々Preferred Networks社は、さまざまなエキスパートの集団である点が大きな強みとなっています。今回、デモでドローンを使用するにあたり、社内の人間がドローン・キットを自作しています。モーターや部品を買い集め、また、信号解析をするなど、Droneの構造やしくみを学び、プログラミングに役立てています。こうしたアプローチは他の企業とのプロジェクトでも同じです。扱う製品の特徴を知ることで、我々の技術を最適に生かすソリューションを開発できると考えています」

開発スピードがベンチャーの強み


 

Preferred Networks エンジニアの米辻氏は、世界的な競走に打ち勝つためのベンチャーの意気込みについて、次のように話す。

「ディープラーニングや映像解析などの技術を個別のニーズに最適化し、最終的に商用化していくまでの時間を極力短くしていくことがベンチャー企業に求められるものと考えています。そのための開発をより効率的にするため、オリジナルのフレームワークを構築しています。その一つ、深層学習の計算処理を効率化するためのフレームワークとしては、『Chainer』(チェイナー)を独自開発しています。『Chainer』の特徴は、柔軟性が高く直感的な操作が可能な点です。これは、より複雑化していくニューラルネットワークの研究・開発をスピーディーに展開していくための利点といえます」

「また、多くのAI分野のプログラムと同様、オープンソースソフトウェア(OSS)を採用しており、これにより、社内の技術者だけでなく、多くの深層学習の研究者や学生と協力関係を結び、開発を効率化しています」

「さらに、当社ではシリコンバレーにも拠点があり、開発・営業とともに、さまざまな人材獲得の窓口としても機能しています。今回の、Amazon Picking Challengeでも、世界のディープラーニングの研究・開発者と交流することができ、人的なネットワークの充実にも役立っています。国内にこだわらず、世界から優れた人材を集めていくことも、国際的な競走に打ち勝つ中で重要なポイントといえるでしょう」

CEATECで西川社長が特別講演 レイテンシーの低減がIoT用途拡大の鍵

10月4日に開催されるCEATECでは、同社代表取締役社長で最高経営責任者の西川徹氏が「CEATEC×産総研人工知能カンファレンス」に登壇し「IoTのエンジンとなるディープラーニング」と題した特別講演を予定している。

講演では、同社の研究成果を紹介しながらIoTの発展による産業の変革について展望する。デバイス同士がリアルタイムで協調し、高度な判断を可能にするIoTにおいて、ディープラーニングを用いることによって、デバイス自身が周囲の環境から学習・適応するという。西川氏は、ディープラーニングの価値を増大させるには、「収集できるデータ量の最大化」から「学習できるデータ量の最大化」への移行が重要であるとし、ディープラーニングを前提としたデータ収集の変換の必要性を指摘している。また、今後は、データ処理にかかるレイテンシー(遅延)をいかに少なくするかが、ビッグデータの用途を拡大する上で必須であるという。

ブースでは3つのデモを実施 ディープラーニングの応用例を紹介

自社ブースの展示では、3つのエリアでそれぞれテーマの異なるデモを実施する。1つは、ドローンが衝突回避を学習する自律運用のデモ。2つ目はAmazon Picking Challengeで用いた技術をドローンで実施するもの。3つめは映像解析のデモで、こちらはドローンに搭載したカメラの映像を用いる。

 

CES 2016でデモした衝突回避学習をドローンで実現

同社のリサーチャーで博士(情報科学)の丸山史郎氏は、出展の概要について、次のように説明する。

「1つ目の展示は、今年1月のCESでトヨタ自動車と共同で実施したデモの応用です。CESでは、自律走行する複数台の模型の自動車が、自ら衝突を回避するものでした。今回は、操作がより難しいドローンを用いて衝突回避の学習をするデモをします」

「強化学習という技術で、ドローンが自ら学習することにより、不測の事態が起きてもそれに対応してうまく動くことができるというデモです。ドローンがランダムな行動をとったときに、正しい行動だと報酬を与え、間違えた行動だと罰を与えます。これを繰り返すことで、自ずから正しいと評価された行動をとるようになっていく。さらに、これまで学習しなかったパターンが発生しても、過去の経験を参考にして、正しい方法を導き出すことができるようになります」

「ドローン同士は通信によって、相互の衝突を回避できますが、鳥による襲撃など不測の事態が生じたときでも、ディープラーニングによる学習によって自動運転でも安全に回避できるようになります」

「6月末ごろから開発を始めて、実質2カ月ぐらいで完成させている。そのぐらいの短期間でも深層学習を使えば、衝突回避できるしくみを作れるというものをお見せしたいと思います。今回は、外部のカメラによる映像からの情報をもとに衝突回避をしますが、技術的にはドローンに搭載したカメラで実施することも可能です。 将来的には映像認識とディープラーニングを結びつけたさまざまなアプリケーションにつなげていけると思います」

世界2位を達成したAmazon Picking Challengeの成果をデモ

「2つ目のロボットの展示は、基本的にAmazon Picking Challengeで出した構成です。Picking Challengeでは、Amazonが米国のアイテムを採用していましたが、今回は来場者の方々に親しみを感じてもらえそうなものとして、日本のアイテムを用いてデモをします。Amazon Picking Challengeでは、『取る』と『直す』の2つの競技にそれぞれ15分ずつの時間が与えられていましたが、今回は、『取る』と『直す』を連続的に実施します。また、ここでもドローンでアイテムを運びます」

ディープラーニングをより使いやすく提供する「DIMo」の具体的事例を紹介

「3つ目の展示は、映像解析のツールを用いたものです。これは、ディープラーニングのためのフレームワーク『DiMo』(Deep Intelligence in Motion)の中の映像解析ツールを用いて、ドローンに設置したカメラからの映像をもとに映像解析のデモを実施するものです。映像解析でどこまで対象を特定できるかをご覧いただくデモであるとともに、こうしたアプリケーションを開発できるDIMoの特徴についてもデモを通じて紹介していきたいと考えています」

「『DIMo』は、Preferred Networks社の最先端の機械学習・ディープラーニングのアルゴリズムを搭載したフレームワークで、IoTにおけるデータ活用ソリューションを構築するためのものです。『DIMo 映像解析パッケージ』は、カメラ映像から物体検出・属性分類・追跡機能を中心に、学習データを作るためのアノテーションツール、カメラ管理を含めたダッシュボードなど含めた統合的な映像解析環境を提供します」「ディープラーニングを駆使することで、より正確な検出・属性分類ができる。DIMoは、さらにユーザーインタフェースが非常に分かりやすくなっており、機械学習、ディープラーニングの複雑さを感じさせないようになっています」

ドイツの「Industry 4.0」や「シンギュラリティ」、さらには、VRやARによるコンピューターネットワークの革新など、今後20-30年にわたる新たな産業改革のうねりの中で、あらゆる産業の効率化、高度化に欠かせないのが深層学習である。実績を重ねつつある日本の若きディープラーニングの旗手Preferred Networksの今後の活躍に期待したい。

CEATEC開催期間中に予定されている講演(パネル)、プレス発表について

CEATEC期間中に予定されているPreferred Networksの講演、プレス発表は以下のとおり。新しい発表も予定されているとのこと。ぜひご参加いただきたい。

10/4(火)
11:15-12:15

国際会議場

IoT推進コンソーシアム総会

「IoTに向けた世界の取り組みと日本の取り組み〔仮〕」
http://www.iotac.jp/event/plenary2016/

15:10-16:10

国際会議場1階102~105会議室

ICTイノベーションフォーラム2016

「AI・ロボット技術の基礎研究と社会展開・社会実装との橋渡し」
http://www.keieiken.co.jp/if2016/

10/5(水)
14:00-15:30

CEATECプレスブース

Preferred Networks社プレス発表
10/6(木)
11:00-11:40

国際会議場301会議室

【CEATEC×産総研人工知能カンファレンス~PAVILION DAY】

「IoTのエンジンとなるディープラーニング」
http://www.ceatec.com/ja/conference/confDateList.html?date=2016-10-06

10/7(金)
10:00-11:00

国際会議場301会議室

CPS/IoTトレンドセッション
「実世界の人工知能 ~交通、製造業、バイオヘルスケア~」

http://www.ceatec.com/ja/conference/confDateList.html?date=2016-10-07

12:30-14:30

国際会議場304会議室

AIと知財について「学習済モデルの再利用について(仮)」

http://www.ceatec.com/ja/conference/confDateList.html?date=2016-10-07

14:40-16:55

国際展示場Hall4オープンステージ

特別展示企画セッション

http://www.ceatec.com/ja/conference/confDateList.html?date=2016-10-07

News

CEATECニュース
出展各社見どころ更新情報
業界最新ニュース
プレスリリース
CEATEC JAPANからのお知らせ
最新情報分析レポート Futuresource
出展ご検討の方はこちら 出展募集サイト

Prime Media Partner

一覧でみる

Media Partner

一覧でみる