IoT時代に寄与する人材育成、教育と研究を通じた社会貢献を目標に進めている学科の取り組みの一部を紹介します。
通信機能に加え、内蔵する多様なセンサ群、高い処理能力というスマートフォンが持つ潜在能力と可能性を活かした新たな技術、システムを提案し、それらを具現化、実証することを目標にしている下記のテーマを紹介、展示、実演します。今回は2ブース分を確保し、全期間出展します。
(1)スマートフォンを音源に用いた高精度屋内測位システム
(2)発電自転車と仮想現実(VR)を連動させた人力発電マネージメントシステム
(3)点字を用いた携帯端末向け入力方式(点字入力IME)
(4)日本語の音と口形の関係性に基づいた機械読唇モデル
(5)カラー手袋を用いたHMMによる手話認識
上記(3)、(4)、(5)は聴覚、発語障がいを持つ人とのコミュニケーション支援や点字や手話の学習支援への利用を目的としたものです。特に、(4)の技術による発話予測は、スポーツ情報番組の中で選手の発言内容の紹介コーナーとしてシリーズ化されて、視聴者から高い評価を得ているものです。
スマートフォンを音源に用いた高精度屋内測位システム
■背景と経緯
屋内での測位要求は、屋外のそれに比べて高い場合も多いと思われる。例えば、工場内の搬送車両の走行制御や視覚障碍者の方への商品棚へのナビゲーションなどへの応用を考慮すると、数十cm程度の測位精度が求められると考えられる。我々は高精度な屋内測位システムを実現するための方法として、スマートフォンから発出する非可聴音の到達時間を用いた測位システムを開発し、複数のスマートフォンに対して同時に、数cm程度の測位誤差に抑えられることを実現してきた(CEATEC2015展示)。しかし、受信機が大きく、また広域化に伴う測位処理時間の増大やスター型の接続構成のため測位エリアの拡大が難しく、実用性に問題があった。
■展示システムの特徴
・無線LANなどの電波を用いた測位では困難な高い測位精度(誤差数cm程度(超音波測位システムと同等))を実現できることを実験で確認している。
・広く普及しているスマートフォンを使用するため、ユーザが専用の機器を持つ必要がない。また、その機能と組み合わせることにより、多様なサービス開発が期待できる。
・ユーザ識別方法として、M系列符号によるスペクトル拡散技術を用いている。したがって、収容ユーザの増加要求に対しても、系列符号の追加のみで容易に対応できる。
・市販のArduino基板に直結できる受信音波の増幅のための音波シールドを試作し、さらに、各Arduino基板内のマイコンに測位処理を分担させる分散処理システム構成により、測位処理の高速化とともに測位エリアの拡大を可能にした。
・上記音波シールドのディジーチェーン構成を実現し、より広域なエリアのカバーを容易にし、実用性を高めた。
・本展示では、複数の移動模型列車に対する測位を行い、高さ方向の測位結果を含め、その有用性を実演する。
発電自転車と仮想現実(VR)を連動させた人力発電マネージメントシステム
■背景と開発目的
我々は、大学という限定されたエリア内に多数の人間が存在し、かつ地域の防災拠点ともなるべき場所において、循環型社会や災害時対策、健康維持に寄与する取り組みについて検討している。その中で、従来の使い捨ての乾電池から再利用可能な蓄電池への置き換えや災害時の電力確保に何らかの寄与ができる人力発電マネージメントシステムの提案、開発を行っている。
電力を“つくる”、“ためる”、“つかう”というサイクルを定常的なものとするため、自転車を漕ぐという労力を必要とする運動に、ゲーミフィケーションの考え方を取り入れた“楽しみ”を加えることにより、日常的に使える、使いたくなるシステムを目指している。現在は、学内のECO推進チームと連携し、初期運用を開始した段階である。
■展示システムの特徴
・発電自転車:
自転車の後輪の回転軸に大型フライホイールを取り付けることによって、実際のサイクリング時に近いペダル感覚を実現。静穏、高効率の発電機により、静かな事務室での使用が可能
・充電制御装置:
低速から高速のペダル回転に対応するために広い入力電圧範囲(36~72V)で動作可能。ユーザのペダリング状況に応じて音声によってユーザに警告し、安定した発電を促進。AC100V、DC13.8V出力により、多くの市販の充電器、機器への接続が可能
・VRサイクリング機能:
Google Street Viewと連動し、発電電力に応じた風景移動を実現。さらに、頭部の動きに追従する360°表示と、ステレオグラムを用いた立体表示によるスマートフォンでのVR機能を実現
・発電情報共有Webページ:
各ユーザの発電情報をクラウドサーバに格納し、その情報をランキング、個人ログとしてWebページに表示、情報を共有。”競争して楽しい、達成して楽しい”による発電へのモチベーションを確保
コミュニケーション支援技術・ツール(聴覚・発語障がい者と健常者)
■研究開発の背景
音声認識、発言内容の自動翻訳や描画文字の認識などの分野で、情報技術はすでに大きく寄与している。聴覚や発語に障がいのある方と健常者とのコミュニケーションを支援する技術・ツールや点字や手話を効率よく修得するための学習ツールへの期待は大きいと思われる。高性能化したパソコンの処理能力や今後ますます高性能化、高機能化が期待されるスマートフォンと情報技術を連携させたコミュニケーションを支援する技術やツールの開発、システム技術の研究開発に取り組んでいる。
■展示システム
以下の3つの研究開発中の技術、システムを紹介する。
・点字を用いた携帯端末向け入力方式(点字入力IME):
スマートフォンのマルチタッチ機能を利用した、点字と同じ指配置による文字入力方式(点字入力IME)である。日本語ワープロ検定1級と同程度の高速な文字入力が可能であり、また、点字練習ソフトとしての利用もできる。すでにGoogle Playで公開中であり、スマートフォンを用いて実演紹介する。
・日本語の音と口形の関係性に基づいた機械読唇モデル:
発話映像の中の口形動画から、画像処理技術とパターン認識によって発話内容を推定する。口形を時間区間で分割し、その中で口形の類似度を判断するとともに単語との関係性から発語を予想している。すでに、一定の推定精度を確保しており、スポーツ番組の中で、選手の口形映像から発話内容を推定するコーナーがシリーズ化され、高い評価を得ている。
・カラー手袋を用いたHMMによる手話認識:
スマートフォン内蔵の光学カメラによる画像での手話認識である。手の動きや形などの検出のために、独自のカラー手袋を用いている。認識は、手話動画から抽出した特徴量を学習させた隠れマルコフモデルを用いている。株式会社ケイ・シー・シー殿から提供中の手話学習ツールと連動した認識実験デモを行う。
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成果のデモビデオが視聴できます。
手話学習者向けスマートデバイス動画辞典のサイトです(株式会社ケイ・シー・シー殿が運営しています)。