CEATEC ニュース

019

1100度の高温でも壊れない白金温度センサを提案、自動車の排ガス対策や工業用途など幅広い利用へ KOA

これまで850度から900度といった温度までしか計測できなかった白金温度センサを、1100度といったさらに高温域にまで対応させられるようにした素子をCEATEC JAPAN 2018に展示――。抵抗器などを手がけるKOAのブースには、グループ会社で温度センサなどの素子のメーカーである真田KOAの技術を用いた新しい白金温度センサが展示されている。一般的に温度センサが壊れてしまうような1000度を超える温度領域で正確に測定できる温度センサとして、今後の応用が期待される。

このセンサの開発を手掛けるのは、KOA株式会社の子会社である真田KOA株式会社。同社は約90年の歴史を誇る温度センサや抵抗器の老舗企業でで、2001年にKOAグループ入りした。同社は、白金を用いた薄膜温度センサを1982年に初めて製品化するなど、技術開発力を備えた企業で、KOAグループでは温度センサ以外にも、雷などのサージを逃がす安全部品であるバリスタなどの開発・製造を担当しており、宇宙開発用部品としてJAXA(宇宙航空研究開発機構)向けの高信頼の抵抗器も生産している。

自動車の車載部品分野で高温の測定の要求が高まる

真田KOAが開発した白金温度センサーの外観

1000度を超える温度センサの必要性は、主に車載分野から高まってきている。エンジンを小型化しターボチャージャーで性能を確保する「ダウンサイジング」が進む中で、排気ガスの温度測定も高温化が進んでいる。真田KOA 技術センター ディスクリート技術グループ プロフィットマネージャーの下平正浩氏によると、「環境規制の強化にともない高燃費化及び排ガスの清浄化要求はますます高まる傾向にあり、触媒などの保護や低燃費化のために、従来よりも高温の排気ガスをより高精度に測定することが必要となり、超高温耐久の温度センサが求められるようになってきた。既存センサでは高温領域でサーミスタが用いられていたが、900度程度が限界だった。それよりも高い温度の測定ニーズがあり、耐熱性に優れた白金薄膜技術を用いた製品開発を進めた」という。また、このセンサは低温から高温まで高い精度で測定可能になる。

セラミックスコーティング技術を独自開発

白金の皮膜をセラミックスの保護膜でカバーした開発品の構造

CEATEC JAPAN 2018でKOAは、セラミックスを保護膜に使う白金温度センサを出展する。白金は安定な貴金属だが、1000度を超える温度領域では時間経過とともに揮発して消失してしまう。これを高温から保護する膜が必要になる。セラミックスを採用するまでには、紆余曲折もあった。一般に800度程度までだとガラスを保護膜に使うのだが、ガラスが流れ出して白金が飛んでしまうことがわかり、セラミックスコーティングを採用することにした。セラミックスも粒径の制御などの工夫を重ねたことで、1000度を超えても白金薄膜を保護できる白金温度センサの開発に成功した。

 

KOAでは、前回のCEATEC JAPAN 2017でもセラミックス保護膜を使う高温対応の白金温度センサの開発品を展示していた。今回は、更に温度の急上昇、急下降のような熱衝撃に対する耐久性を高めたほか、センサから出るリード線の耐久性も向上させる改良を施した。下平氏は「海外メーカーなどで1000度以下の高温に耐える白金温度センサの発表事例はあるが、実際に稼働する部品として見た経験はない。我々は1100度を超えても対応できる部品としての白金温度センサを実際に開発しているアドバンテージがあると考えている」と語る。

超高温対応のプローブを作成できるパートナー企業を模索

1100度を超える温度に耐えられる白金温度センサを開発した真田KOAだが、実はそれだけでは実環境への実装はできない。白金温度センサを保護管に入れた「プローブ」とすることで、実装できる部品になる。しかしKOAグループには、1100度の超高温対応のプローブを作る技術の蓄積がないという。KOAがCEATEC JAPAN 2018に出展する目的のひとつは、自社開発した白金温度センサ素子を、プローブ化できる技術を持ち、いっしょに新製品開発をするパートナー企業の探索にある。

 

下平氏は、「一般に、プローブにするための保護管に白金温度センサを封入すると、超高温状態では保護管の内側の金属が酸化するために酸素が不足した雰囲気になる。高温で酸素が不足すると、保護膜の一部が還元されて化合物を形成し、白金薄膜に悪影響を及ぼす。KOAのセラミックス保護膜では、超高温の酸素不足の雰囲気内でも白金薄膜が劣化しない。こうした機能を備える部品を使って、プローブの開発能力を持つ企業と一緒に製品化していきたい」と語る。

 

KOAでは、超高温に耐える白金温度センサの用途として、メインの車載の排ガス温度センサのほか、工業用途でも高温の温度管理が必要な部分に適用できると見ている。しかし、温度センサを開発している企業の視点だけでは、実際のニーズを読みきれないとも考えている。「KOAでは、こういった技術ができたという技術情報を、CEATECのブースと講演(N2-01 超高耐熱白金温度センサの実現に向けて)で多くの来場者に提案していきたい。KOAグループで高度な温度センサ技術を持っていることを知ってもらい、新しい市場の開拓や用途の広がりにつながるような来場者の方々とコミュニケーションを図り、市場ニーズに応えられる製品開発を一緒に進めるパートナー企業を見つけていきたい」(下平氏)。

会社名
KOA(株)
展示エリア
[H]電子部品/デバイス&装置
小間番号
H098
出展予定製品
センサ
受動部品
サイネージ
URL
http://www.koaglobal.com/
出展者詳細
https://www.ceatec.com/ja/showfloor/detail.html?id=12060

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